「入居者が孤独死したときに、大家はどんな対応をしたらいいんだろう?」
あなたが、アパートやマンションの大家さんになったばかりの場合、
どんな対応をすれば、いいのかわからない
というのが、本音ではないでしょうか。
とりわけ、孤独死は約10年前と比べて2倍以上になっていますから、大家さんが不安に思うのも無理はありません。
出典:内閣府「東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」
とりわけ不安なのが、孤独死による損害賠償の問題です。
入居者による孤独死の対応を行う際には、押さえるべき注意点やポイントを知っておかないと、大家さん側の金銭的な損失が大きく増える可能性があるのです。
そこで、本記事では
「管理するアパートやマンションで孤独死が起きたときのベストな対応が知りたい」
「金銭的な負担をなるべく抑えたい」
という方に向けて解説します。
金銭的な負担を最小限にするためのポイントに加えて、ステップごとに「大家さんが行うべきこと」もまとまっているので、満足のいく「ベストな対応」をとることができます。
それでは早速、ご覧ください。
Contents
1. 入居者が「孤独死」した際の流れ10STEPと大家さんが行うべき対応
まずは大前提として、入居者の「孤独死」が発生してから「退去費用の精算」までの流れを知っておきましょう。
入居者が孤独死した場合、以下の10STEPを経ることになります。
入居者が「孤独死」した際の流れ「10STEP」
STEP | 流れ |
---|---|
STEP1 | 「入居者の異常」に関する通報が入る |
STEP2 | 入居者の状況を確認して警察に通報する |
STEP3 | 遺族に「入居者の死亡」について連絡する |
STEP4 | 警察の鑑識が「現場検証」を行う |
STEP5 | 警察が「ご遺体の検視」を行う |
STEP6 | ご遺族に「原状回復(特殊清掃)」や「遺品整理」について協力をあおぐ |
STEP7 | 業者に連絡して「特殊清掃」を依頼する |
STEP8 | 遺体がご遺族のもとに引き渡される |
STEP9 | 「賃貸借契約」の解除を行う |
STEP10 | ご遺族と一緒に原状回復費用の精算を行う |
上記の流れに沿って、各STEPで発生することや、大家さんが行うべき対応について、詳しく解説していきます。
1-1. 「入居者の異常」に関する通報が入る
最初に「入居者の異常」に関する通報が入ります。
職場上の関係者や近親者、近隣住民から通報を受けるのが一般的です。
具体的には、
「〇号室の家主と連絡がつかない」
「〇号室の家から不快なニオイ(腐敗臭)がする」
「〇号室にハエが飛び回っていて気持ち悪い」
といった連絡に端を発することが多いです。
1-2. 入居者の状況を確認して警察に通報する
通報を受けたら、大家さんは入居者宅に向かいましょう。
その際、インターフォンを鳴らしても、既知の電話番号に連絡しても応答が一切ない場合には、合鍵を使って、部屋のなかに入り、状況を確認しましょう。
ウジやハエが発生していたり、腐った生ごみやチーズのようなニオイを感じりした場合には、死亡している可能性が高いです。直ちに110番をコールして警察に通報しましょう。
なお、警察が現場に到着するまでは、現場のものに手を触れないようにしましょう。
外見に著しい変化が見られない場合や、生死の判断ができない場合には、119番をコールして救急車を呼びましょう。
1-3. 遺族に「入居者の死亡」について連絡する
目視による確認で、入居者の死亡が確認できた場合。
警察の次に「ご遺族(≒連帯保証人)」にも電話して、以下の3点について伝えましょう。
遺族に第一報でお伝えすること
- 入居者が死亡した事実
- 賃貸借契約の解除手続きを行う予定であること
- 遺品整理や原状回復を行う予定であること
現場でいきなり、金銭的な話をしてしまうと、面食らってしまう可能性が高いため、「アパートから退去いただくための精算業務が発生する」ことを軽く伝えておくのがポイントです。
スムーズに手続きが進められるように、あらかじめ予告しておきましょう。
万が一、連帯保証人の連絡先がわからない場合には「賃貸借契約書」をチェックしてください。
賃貸アパートや賃貸マンションの場合、契約時に「連帯保証人」を記載することになっています。契約書を見れば、連帯保証人の氏名と連絡先がわかります。
多くの場合、連帯保証人は、親や兄弟、親戚、子どもなどの親族である場合がほとんどです。
1-4. 警察の鑑識が「現場検証」を行う
大家さんが警察に通報すると、ほどなくして警察の検視課が来て「現場検証」を行います。
孤独死の場合、そのまま自然死として片づけるのではなく、
- 殺人などの事件性はないのか?(=事件性の有無)
- 事故なのか?自然死なのか?(=死亡理由)
- 死亡推定時刻はいつなのか?
といったことを特定するのです。
現場検証が終わるまでは、大家さんはもとより、家族であっても、室内に立ち入ることはできません。
現場検証を行っている間は、現場の状況を見守りましょう。
現場検証後、明らかな「病死」だと判断されれば、遺体は遺族のもとに引き渡されます。
1-5.警察が「ご遺体の検視」を行う
腐敗が進んでいると、死因がわからなかったり、身元の特定ができなかったりすることがあります。
そういったケースでは、さらに詳しい「検視」が行われることになっています。
検視では、医師と検察官がタッグを組んで、以下の2点について調べます。
遺体の検視で行うこと
- 死因(=殺人など事件性はないか)
- 身元の特定(=誰なのか)
事件性がなく、死因もすんなり特定できる場合には、半日程度、検視が行われます。
事件性はないが、死因が特定できない場合には、1~2日程度かかります。
一方、検視を進めるなかで「事件性」が疑われる場合には、身体のなかの状態を調べる「司法解剖」が行われます。司法解剖の場合には、数日~1ヵ月以上の時間がかかります。
腐敗が進んでいて身元の確認が取れない場合も、遺体の引き渡しまで時間がかかります。「DNA鑑定」で身元の特定を行いうため、遺体の引き渡しまで「1ヵ月以上」かかる場合もあります。
まとめると以下の通りになります。
遺体の引き渡しまでの日数
事件性がない場合 | 半日程度 |
---|---|
事件性はないが、死因が分からない場合 | 1~2日程度 |
事件性が疑われる場合(=司法解剖する場合) | 数日から1か月以上 |
腐敗が進んでいて身元の確認が取れない場合 | 1ヵ月以上かかるケースもある |
いずれにしても、大家さんやご遺族は何もできないため、待つのみです。
1-6.ご遺族に「原状回復(特殊清掃)」や「遺品整理」について協力をあおぐ
遺体の検視が行われるタイミングで、ただ待ちぼうけするのではなく、ご遺族と今後のことについて話し合いを進めておきましょう。
遺族と早いタイミングで話し合いをしておかないと、費用負担について拒否されてしまったり、話がこじれたりする可能性があるからです。
とりわけ問題になるのが「室内の損傷」です。
特殊清掃をしないままでは、室内の劣化や損傷がどんどん進行していきます。損傷が進んだ場合、特殊清掃費用が膨大になる恐れがあります。
以下については、一つの作業ごとに1万円~3万円程度の費用が発生し、人件費がさらに2万円~上乗せされます。損傷具合によっては、特殊清掃だけで総額100万円以上の損失を被るケースもザラにあります。
特殊清掃作業の例
- クロスの張り替え
- 畳やふすまの交換
- 消臭剤や除菌剤の散布
- 壁紙の下の石膏ボードの張り替え
- 床板の取り換え
- ハエやウジ、ゴキブリなどの害虫駆除
- 浴室の清掃
- 汚物の撤去
- 強烈なニオイを除去するオゾン脱臭
ですから、特殊清掃など原状回復のことも含めて、遺族との話し合いは早めに行っておくようにしましょう。
あらかじめ、遺族と話しておきたい内容は、以下の通りです。
遺族とあらかじめ話し合っておくべき項目
- 原状回復するための「特殊清掃費用」の負担に協力してほしいこと
- 部屋の明け渡しが完了するまで(=室内の荷物がすべて撤去されるまで)家賃が発生するため、その間の費用を負担してほしいこと
- 故人による「賃貸借契約」の解除手続きに協力してほしいこと
- 故人の「家財の撤去」と「遺品整理」を行ってほしいこと
- 未払いの家賃がある場合には、遺族の方で支払いを完了させてほしいこと
- 特殊清掃や遺品整理の依頼は、大家と遺族のどちらが行うのか
上記のうち「特殊清掃や遺品整理の依頼は、大家と遺族のどちらが行うのか」については、しっかり話し合って決めておきましょう。
大家さんと遺族のどちらが依頼しても問題ないことですが、遺族側にお願いできれば、それがベストです。「原状回復費用なんて負担しない!」と啖呵を切られるリスクが減るからです。
とはいえ、遺族側が動かない場合には、大家さんが主導して、業者の手配をした方がいいです。
孤独死が起きた室内をそのまま放置しておくと、腐敗が進んで原状回復費用が膨れ上がっていく一方だからです。
どちらが原状回復や遺品整理の依頼を行うかについては、ケースバイケースで判断していきましょう。
いずれにしてもお金の問題は、揉め事に発展しやすいため「協力してほしい」という寄り添いのスタンスで掛け合うことが大切です。その方が、大家さん側の金銭的な負担を最小限にしやすいからです。
対立するのではなく、互いに協力しながら問題解決するものと心得ておきましょう。
1-7.業者に連絡して「特殊清掃」を依頼する
遺族との協議が終わったら「特殊清掃」の依頼を早急に行いましょう。
特殊清掃とは、孤独死や事件、自殺、事故などにより、著しい損傷を受けた室内を元通りにする清掃のことをいいます。
一般的なハウスクリーニングでは、ゴミを集めたり汚れを取り除いたりといった作業が中心になりますが、特殊清掃の場合には、大量に発生したハエやウジなどの害虫駆除や、血液や体液の除去などが中心になります。
孤独死が発生した際には、通常のハウスクリーニングではなく特殊清掃を専門に行っている事業者に依頼しましょう。
その際「消臭技術」に強みのある業者を選定すると安心です。新しい入居者からのクレームを最小限に抑えられるからです。業者選定においては、この点をチェックしましょう。
その他のチェックポイントは以下の通りです。
特殊清掃業者を選定する際のポイント
- アパートやマンションの特殊清掃を専門に行う事業者か
- 特殊清掃の実績が豊富な事業者か
- 解体許可を取得している事業者か
- 遺品整理や孤独死保険など周辺業務についても相談できる事業者か
- 納得のいく「適正価格」で作業を行う事業者か
上記を参考に、業者選定を行うようにしましょう。
特殊清掃は必ず依頼しなければならないのか?
孤独死の発見がすぐだった場合、ほとんど室内には損傷が残らないケースもあります。
そういったケースで「特殊清掃を依頼するべきなのか」、迷う方もいるのではないでしょうか。
結論からいえば、室内への損傷がなくても、特殊清掃事業者に問い合わせて、室内の状況をチェックしてもらうのがおすすめです。
なぜならば「室内に残るニオイ」の問題があるからです。ご自身ではほとんどニオイが気にならなかったとしても、ニオイに敏感な人は分かる場合があります。
損傷がなければ、ハウスクリーニングだけで問題ないと考えがちですが、自己判断で、費用を浮かせるために特殊清掃を依頼しないのは危険です。
場合によっては、大きなクレームに発展する可能性もあるため、まずは特殊清掃事業者に連絡して、室内をチェックしてもらうようにしましょう。
その際、ニオイのレベルを判別できるセンサー機器をもっている事業者だと安心です。
客観的な数値で、部屋の異常を検知できるからです。
1-8.遺体がご遺族のもとに引き渡される
検視の結果、事件性がないと判断されれば、遺体はご遺族のもとに引き渡されます。
遺体の引き渡しにかかる時間は先述の通りです。
遺体の引き渡しまでの日数
事件性がない場合 | 半日程度 |
---|---|
事件性はないが、死因が分からない場合 | 1~2日程度 |
事件性が疑われる場合(=司法解剖する場合) | 数日から1か月以上 |
腐敗が進んでいて身元の確認が取れない場合 | 1ヵ月以上かかるケースもある |
1-9.「賃貸借契約」の解除を行う
葬儀が落ち着いた頃合いで、遺族に再度連絡し、退去の手続きを進めるためのアポイントを取りましょう。
真っ先に行いたいのが「賃貸借契約」の解除です。
亡くなった入居者と大家さんとの間で締結していた契約を白紙に戻します。
契約の解除においては「賃貸借契約解約申込書」を用意して、ご遺族に記入してもらいましょう。
賃貸借契約を解除しない限り、新しい入居者を受け入れることができませんので、漏れなく記入してもらうようにしてください。
なお、人が亡くなってから葬儀が行われるまでの所要時間は「3~4日程度」といわれています。
そのため、警察からご遺族に対して、ご遺体の引き渡しが行われてから1週間くらいは、相手の心情を察し、ご遺族にアポイントを取るのは控えた方がよいと思います。
1-10.ご遺族と一緒に原状回復費用の精算を行う
最後に「原状回復および退去にかかわる費用の精算」を行います。
発生しうる費用は以下の通りです。
原状回復において発生しうる費用
- 特殊清掃費用(室内の脱臭/体液等によって腐敗した畳やふすまの交換などの実費)
- 部屋の明け渡しが完了するまで(=清掃が済み、室内の荷物がすべて撤去されるまで)の家賃
- 「家財の撤去」や「遺品整理」に関わる費用(必要に応じて発生する費用)
- (ある場合)未払いの家賃
あくまでも「孤独死」によって受けた損失部分のみ請求するものだと心得ておきましょう。
経年劣化に伴う「通常損耗」については、遺族に請求することはできません。
その線引きをしっかり明確にしたうえで、費用負担をお願いするとトラブルに発展しにくいです。
ぜひ、覚えておきましょう。
2.10STEPとやるべきことの「まとめ一覧表」
ここで、10STEPと、それぞれのフェーズにおいて、大家さん側が「やるべきこと」をまとめました。
以下をご覧ください。
入居者が「孤独死」した際の流れ10STEPと行うべき対応
STEP | 流れ | 大家さんがやるべきこと |
---|---|---|
STEP1 | 「入居者の異常」に関する通報が入る | ― |
STEP2 | 入居者の状況を確認して警察に通報する | 合鍵を使って室内を確認し、入居者の死亡が確認できたら、すぐに警察に連絡する。生死がわからない場合は救急車を呼ぶ |
STEP3 | 遺族に「入居者の死亡」について連絡する | 入居者が死亡した事実や、今後、手続きが発生することなどについて、あらかじめ予告しておく |
STEP4 | 警察の鑑識が「現場検証」を行う | ― |
STEP5 | 警察が「ご遺体の検視」を行う | ― |
STEP6 | .ご遺族に「原状回復(特殊清掃)」や「遺品整理」について協力をあおぐ | 特殊清掃費用や遺品整理、未払いの家賃の負担のほか、賃貸借契約の解除手続きへの協力をお願いする |
STEP7 | 業者に連絡して「特殊清掃」を依頼する | 特殊清掃の実績が豊富な専門業者に連絡して、室内の清掃を依頼する |
STEP8 | 遺体がご遺族のもとに引き渡される | ― |
STEP9 | 「賃貸借契約」の解除を行う | 「賃貸借契約解約申込書」を用意して、ご遺族に記入してもらう |
STEP10 | ご遺族と一緒に原状回復費用の精算を行う | 特殊清掃費用/部屋の明け渡しが完了するまでの家賃/「家財の撤去」や「遺品整理」に関わる費用/未払いの家賃について、遺族と協議のうえ、費用負担の割合を決めて精算する |
上記の流れとやるべきことを押さえておけば、入居者が孤独死した場合にも、冷静に対処できます。
ぜひ、覚えておいてくださいね。
3.原状回復費用の請求を遺族に行う際に知っておくべきこと
「孤独死の場合、実際のところ、どれくらいの費用を遺族に請求できるのか?」が気になる大家さんが大勢いらっしゃいます。
大家さんの心情として、金銭的な負担をなるべく減らしたいと考えるのが、普通ですよね。
加えて「孤独死とはいえ、部屋を汚したのだから、損害賠償請求できるはずだ」と考える方も少なくないと思います。
しかし、この点については残念ながら「全額負担してもらうのはむずかしい」のが現状です。
大家さんと遺族が互いに歩み寄り、協議しながら、お互いに納得できる妥協ラインを引いて、落としどころをつけるしかないのです。
国土交通省が発行した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」においては、以下のように明記されています。
“賃貸人は、賃借人に対して、本ガイドラインを参考に、明け渡しの際の原状回復の内容等を具体的に契約前に開示し、賃借人の十分な確認を得たうえで、双方の合意により契約事項として取り決める必要がある。”
出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
つまり、賃貸借契約を結ぶときに、双方が納得のいく原状回復費用の落としどころを決めておいてねということです。
費用負担については「大家さん:遺族」が1:9になる場合もあれば、9:1や7:3になるケースもあるのが実情なのです。
とはいえ、大家さんが賃貸借契約上の「連帯保証人」に対して、原状回復費用や損害賠償の請求を行った場合、その請求の棄却はできないことになっています。
つまり、通常損耗を除いた「孤独死による損害部分」は、連帯保証人に負担してもらえるのが原則というわけです。
しかし、裁判で争った場合には、事情が異なります。
多くの判例において「孤独死=自然死」とみなし「大家側の損害賠償請求を認めない/認めても、部分的な賠償に限る」のが実情となっています。
「連帯保証人は大家さんの請求を棄却できないのが原則だが、裁判では遺族側が有利になる」というねじれ現象が、原状回復費用の負担に関する問題を複雑化させているのが実情です。
ですから、大家さんとしてベストな対応は「遺族と連携を取りながら穏便に精算を行う」に尽きます。遺族(連帯保証人)が支払いを渋ったからといって、声を荒げないのが得策です。
遺族が「費用負担をしたくない」という心情に理解を示しつつ、それでも「この部分は支払ってほしい」というラインを提示して、協力をあおぐようにしましょう。
4. 孤独死の対応において押さえたいポイント4つ
管理しているアパートやマンションで孤独死が発生した場合に、押さえておきたいポイントは全部で4つあります。
- 原状回復費用の請求は「連帯保証人」に行う
- 連帯保証人が「友人」の場合は「遺族→友人」の順に交渉する
- 入居者が加入している家財保険の特約を確認する
- 賃貸借契約の解除の通知は、相続人全員に行う
1つずつ、解説していきます。
4-1.原状回復費用の請求は「連帯保証人」に行う
本記事では、原状回復費用の請求を「遺族」に行うようお伝えしていますが、より厳密にいうと「連帯保証人」に行うようにしていただきたいと思います。
ほとんどの場合、遺族=連帯保証人ですが、稀にそうなっていない場合があるので、注意しましょう。
なぜ、連帯保証人に連絡しなければならないのか。
それは、入居者が支払えなくなった原状回復費用を肩代わりする責任は「連帯保証人」が負うものと決められているからです。
アパートやマンションにおける「連帯保証人」とは、入居者が家賃や修繕費が支払えなくなった場合の弁償責任を肩代わりする人なのです。
どのような場合であっても、連帯保証人は、費用を負担する責務が発生します。
「原状回復費用の請求は、遺族などの近親者じゃだめなの?」という方もいらっしゃるかと思いますが、賃貸借契約の記載が「遺族=連帯保証人」になっていれば問題なく請求できます。
ほとんどの場合、連帯保証人は親や子ども、孫、きょうだいなどの近親者である場合が多いです。
「原状回復費用の請求相手=連帯保証人」ということを、覚えておきましょう。
4-2.連帯保証人が「友人」の場合は「遺族→友人」の順に交渉する
稀に、友人などを連帯保証人に据えているケースがあります。
万が一「連帯保証人=友人」である場合。
原状回復費用の請求は、連帯保証人に行うのが原則ですから、友人に連絡した方がいいように思いますよね。
しかし、そういった場合にも、まずは遺族に連絡した方が話がベターです。
なぜならば、友人だと「私は関係ない」と啖呵を切ってしまう可能性があるからです。
「連帯保証人じゃない遺族に賠償請求できるの?」と思われるかもしれませんが、
原状回復費用は、遺族に請求することも可能です。
遺族は、亡くなった入居者の財産を相続する立場にあるからです。
民法第896条に基づき、借主が死亡した場合「賃貸借契約」そのものが相続の対象となり、相続人に相続されることになっています。
ただし、遺族は「相続放棄」するリスクがあります。
相続放棄すると、原状回復費用も遺品整理費用も、遺族が負担する必要はなくなります。
そういったリスクがあることを踏まえたうえで、慎重に交渉を進めていきましょう。
「原状回復費用の請求」を行う相手の優先順位
「連帯保証人=遺族」の場合 | 「連帯保証人=友人など」の場合 |
---|---|
遺族に連絡すればOK | ①遺族 ↓ 相続放棄されたら ↓ ②連帯保証人 |
4-3. 入居者が加入している家財保険の特約を確認する
孤独死によって亡くなった入居者が、孤独死によって生じた損害をカバーできる「特約」つきの家財保険に加入している場合があります。
その場合、大家さんの金銭的な負担を抑えることができます。
補償範囲は特約の内容によって異なりますが、主な補償内容としては、以下が挙げられます。
家財保険の特約の補償内容
- 遺品整理費用
- 原状回復費用
特約の内容によりけりですが、原状回復にかかわる費用や遺品整理にかかわる費用などについて補償が受けられることが多いのです。
その一方、孤独死によって被った逸失利益(事故物件化による家賃の減額/空室期間の家賃など)については、補償の対象外となっていますので、注意しましょう。
家財保険の契約状況は、亡くなった入居者がアパートやマンションに入居したときに契約した「家財保険の契約内容」を見れば「孤独死による損害をカバーできるか否か」がわかります。過去の書類を確認してみましょう。
よく分からない場合は、アパートやマンションが日頃取引している家財保険の会社に問い合わせてみましょう。
4-4.賃貸借契約の解除の通知は、相続人全員に行う
入居者が死亡した場合、賃貸借契約の解除を行います。
その際に「相続人である遺族全員」に「賃貸借契約解約申込書」に記入してもらうことを忘れないようにしましょう。
先述の通り、借主が亡くなった場合には、賃貸借契約そのものが相続財産となり、相続人である遺族に相続されることになっています。
さらに、民法898条、899条では、相続人が複数人いる場合、賃貸借契約の相続は、相続人全員が対象となり、分割協議をしない限りは、共有財産として取り扱われることになっているからです。
滞りなく次の入居者に引き継ぐためにも、必ず相続人全員に対して、「賃貸借契約解約申込書」の記入を依頼するようにしましょう。
5.孤独死のトラブルを未然に回避するポイント5つ
孤独死が何日も放置されると、大規模な原状回復工事が発生し、金銭的な負担が大きく膨らむケースがあります。
そうならないために、押さえておきたいポイントをご説明します。
ポイントは全部で5つです。
- 大家向けの「孤独死保険」に加入する
- 特殊清掃や遺品整理をワンストップで依頼できる業者とつながっておく
- 契約前に、家族や連帯保証人と連絡が取れるか確認する
- 見守りサービスを入居者や家族にすすめる
- 自治体の高齢者見守りサービスを利用する
1つずつ、解説していきますね。
5-1.大家向けの「孤独死保険」に加入する
孤独死が発生した場合、100万円単位の原状回復費用が発生する場合があります。
さらに、遺族との協議が難航して、大家さん側の費用負担が大きくなるケースも少なくありません。
そのため、大家さんが加入する「家主型の孤独死保険」に加入するのがおすすめです。
孤独死によって発生した損害をカバーできるからです。
主な補償内容は以下の通りです。
家財保険の特約の補償内容
- 遺品整理費用
- 原状回復費用
- 家賃の損失費用
嬉しいのは「家賃の損失分」もカバーしてくれる点です。
入居者が加入する家財保険の特約との違いはその点にあります。
「突発的な費用負担を避けたい」「アパートの入居者は高齢者が多い」といった方は、万が一に備えて孤独死保険に加入しておくと安心でしょう。
5-2.特殊清掃や遺品整理をワンストップで依頼できる業者とつながっておく
入居者の孤独死は、いつなんどき起こるかわかりません。
ある日、突然起こります。
そのため、日頃から、特殊清掃や遺品整理を依頼できる事業者とつながっていると安心です。
というわけで、安心して依頼できる事業者をあらかじめ見つけておきましょう。
事業者を選定する際のポイントは以下の通りです。
特殊清掃事業者を選定する際のポイント
- 消臭技術に強みのある事業者か
- アパートやマンションの特殊清掃を専門に行う事業者か
- 特殊清掃の実績が豊富な事業者か
- 解体許可を取得している事業者か
- 遺品整理や孤独死保険など周辺業務についても相談できる事業者か
- 納得のいく「適正価格」で作業を行う事業者か
上記のチェックポイントを参考に、信頼できる事業者とつながっておきましょう。
5-3.契約前に、家族や連帯保証人と連絡が取れるか確認する
孤独死する人のなかには、家族との縁が薄いケースも少なくありません。
遺体の引き取りを拒否したり、損害賠償請求に応じなかったり、遺品整理を行わなかったりする遺族もいるのです。
そういった場合、大家さんが一方的に損失を被る可能性が大きいです。
ですから、賃貸借契約を結ぶ際に、家族や連帯保証人が
- 連絡が取れる相手なのか
- 万が一の際には、協力を仰げる相手なのか
といった点について確認しておくと安心でしょう。
5-4.「見守りサービス」を入居者や家族にすすめる
孤独死の死因のダントツトップが「病死」で64.7%を占めています。
さらに、15日以上経過してから発見されるケースが、全体の30%を占めています。
このような現状を踏まえると、孤独死を避けるには「日々、生存確認を行うこと」が、もっとも重要なポイントだといえます。
そこで活用したいのが「見守りサービス」です。
家での安否確認を24時間365日体制で行えたり、緊急時に警備会社に危険を知らせられたりする「民間のサービス」があるのです。
一例としては、セコムが提供している「親の見守りプラン」が挙げられます。
室内の生活導線にセンサーを設置し、一定時間、動きがない場合は「異常」とみなし、必要に応じて現場にスタッフを派遣してくれます。
また、異常時には、消防署に通報するサービスや、首にかけるペンダントを握るだけで、セコムに救急信号を送れるサービスもあります。
見守りサービスは、入居者の病死のリスクを抑えられるうえ、発見が遅れるリスクも最小限に抑えられるため、一石二鳥なのです。
入居者が高齢の場合、こういったサービスを、入居者やそのご家族におすすめしておくと安心でしょう。
5-5.自治体の「高齢者見守りサービス」を利用する
前項で取り上げたような「見守りサービス」は地方自治体ごとに行っている場合もあります。
たとえば、神奈川県平塚市では、高齢者向けに「在宅時緊急通報システム」を月額400円で提供しています。
人の動きを感知するセンサーによって、家にいるときの安否確認を24時間体制で行うことができます。
さらに、何があった際には「緊急通報システム機器」か「ペンダント」を押すだけで、看護師や相談員とつながり、家族に連絡がいくようになっています。
仕組みとしてはセコムの「親の見守りプラン」と似ています。
対象者は「65歳以上の高齢者のみの世帯で、緊急対応が必要な発作を頻発する可能性があり、日常注意を要する状態にある方」です。
お住まいの市区町村によっては、同様のサービスを提供していない場合もあります。高齢者向けの見守りサービスがないか、問い合わせて確認してみましょう。
市区町村における見守りサービスの提供状況は「高齢者見守り・安否確認比較.com」というサイトが非常に参考になります。チェックしてみてはいかがでしょうか。
出典:平塚市「在宅時緊急通報システム」
6.孤独死の特殊清掃・遺品整理・ハウスクリーニングは「リスクベネフィット」におまかせください!
ここまでの記事を通して、アパートやマンションで孤独死が発生した際の「ベストな対処法」について、理解することができたのではないでしょうか。
しかし、その一方で、以下のような悩みを抱えている方もいるかもしれません。
「原状回復(特殊清掃)を安心して任せられる事業者を知りたい」
「あまり費用をかけずに、原状回復(特殊清掃)してほしい」
そのような悩みがある方は「リスクベネフィット」までお問い合わせください。
リスクベネフィットでは、特殊清掃の要(かなめ)である「消臭」に関する特許を業界で唯一取得しています。この特許技術により、従来の脱臭技術ではむずかしかった「ミクロレベルの完全消臭」が実現可能となりました。
また、当社では、孤独死対応に必要な作業をオールインパッケージにした基本プラン「孤独死パック」もご提供しています。こちらは、お値打ち価格の「78,670円(税込)」でご提供しています。
サービス内容は以下の通りです。
基本プラン「孤独死パック」の提供サービス
汚染物除去/汚物清掃/ライト照射確認/消毒剤散布/オゾン燻蒸/殺虫・除去剤散布/近隣対策/関係者との交渉
特殊清掃においては「人件費(相場:2万円~)」「汚物除去(相場:2万円~)」「オゾン燻蒸(相場:3万円~)」といった具合に、作業別に費用が加算されていくため、合計で20~30万円以上かかるケースも決して少なくありません。
その点、孤独死パックであれば、オールインワンパッケージで「8万円以下」なので、圧倒的にリーズナブルです。
技術力はもとより、サービスのボリュームと価格のバランス(=コストパフォーマンス)も重視する多くのお客様から、たいへん好評を博しています。
リスクベネフィットの特徴3つ
●特許技術による完全消臭
業界唯一の消臭技術により、ミクロレベルでの消臭が実現可能
●臭気の徹底排除
臭気センサーによる「見える化」により、感覚に頼らない徹底消臭を実現
●コストパフォーマンス
基本プランである「孤独死パック」は78,670円でご提供
電話でお問い合わせくだされば、その場で「概算のお見積金額」をお伝えすることも可能です。
「原状回復」や「特殊清掃」でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
いかがでしたか。
アパートやマンションの入居者が孤独死した場合の適切な対応について、理解することができたのではないでしょうか。
ここで、本記事の内容をまとめます。
入居者が「孤独死」した際の流れ10STEPと行うべき対応
STEP | 流れ | 大家さんがやるべきこと |
---|---|---|
STEP1 | 「入居者の異常」に関する通報が入る | ― |
STEP2 | 入居者の状況を確認して警察に通報する | 合鍵を使って室内を確認し、入居者の死亡が確認できたら、すぐに警察に連絡する。生死がわからない場合は救急車を呼ぶ |
STEP3 | 遺族に「入居者の死亡」について連絡する | 入居者が死亡した事実や、今後、手続きが発生することなどについて、あらかじめ予告しておく |
STEP4 | 警察の鑑識が「現場検証」を行う | ― |
STEP5 | 警察が「ご遺体の検視」を行う | ― |
STEP6 | .ご遺族に「原状回復(特殊清掃)」や「遺品整理」について協力をあおぐ | 特殊清掃費用や遺品整理、未払いの家賃の負担のほか、賃貸借契約の解除手続きへの協力をお願いする |
STEP7 | 業者に連絡して「特殊清掃」を依頼する | 特殊清掃の実績が豊富な専門業者に連絡して、室内の清掃を依頼する |
STEP8 | 遺体がご遺族のもとに引き渡される | ― |
STEP9 | 「賃貸借契約」の解除を行う | 「賃貸借契約解約申込書」を用意して、ご遺族に記入してもらう |
STEP10 | ご遺族と一緒に原状回復費用の精算を行う | 特殊清掃費用/部屋の明け渡しが完了するまでの家賃/「家財の撤去」や「遺品整理」に関わる費用/未払いの家賃について、遺族と協議のうえ、費用負担の割合を決めて精算する |
■原状回復費用の請求を遺族に行う際に知っておくべきこと
- 遺族と連携を取りながら穏便に精算を行う
- 遺族と協議したうえで「ここだけは払ってほしい」というラインを見い出す
- 協力してほしいという姿勢を見せることが大切
■孤独死の対応において押さえたいポイント4つ
- 原状回復費用の請求は「連帯保証人」に行う
- 連帯保証人が「友人」の場合は「遺族→友人」の順に交渉する
- 入居者が加入している家財保険の特約を確認する
- 賃貸借契約の解除の通知は、相続人全員に行う
■孤独死のトラブルを未然に回避するポイント5つ
- 大家向けの「孤独死保険」に加入する
- 特殊清掃や遺品整理をワンストップで依頼できる業者とつながっておく
- 契約前に、家族や連帯保証人と連絡が取れるか確認する
- 「見守りサービス」を入居者や家族にすすめる
- 自治体の「高齢者見守りサービス」を利用する
本記事が、孤独死が発生した際の対応に悩んでいる大家さんのお力になれましたら嬉しいです。