「身内が孤独死してしまい、引き取りを拒否するかどうか迷っている」
このようなケースで悩まれる方は、現代の日本で少なくありません。
実際、身内が孤独死された場合に、「引き取り拒否をしてはいけない」と法律で定められているわけではなく、生前の関係が良好ではなかったために、引き取りをされない方がいらっしゃるのも事実です。
ただし、引き取り拒否をすればすべて終わりというわけではありません。
孤独死をされた身内の方に関する手続きや、気をつけるべきことがあるため、知っておかないと「あのとき、ああしておけば…」と後悔する可能性があります。
この記事を読むことで、孤独死の引き取り拒否はできるのかどうかがわかるだけでなく、どのような手続きが必要なのかを理解することができます。
ぜひ最後までお読みください。
Contents
1.身内が孤独死した場合に「引き取り拒否をしてはならない」という決まりはない
身内が孤独死した場合、引き取り拒否はできるのでしょうか。
冒頭でもお伝えしましたが、実際のところ、「引き取り拒否をしてはならない」という法律上の決まりはありません。
- 「幼い頃に両親が離婚して以来、父親には会っていなかったし、関係は良くないので引き取りは難しい」
- 「縁を切ってしまっているので、引き取りはできない」
などの理由で、孤独死された方の親族が引き取りを拒否することによって、「行旅死亡人(こうりょしぼうにん※)」として自治体で直葬(火葬)し、無縁仏として合祀墓に納め、供養される、といったケースがあるのは事実です。
※行旅死亡人:本人の本籍地や住所がわからない、かつ引き取り手がいない故人のこと。
1-1.一般的には身内が孤独死した場合は引き取るのが道義的
身内が孤独死した場合に、引き取りに関して法的な拘束力はないとお伝えしましたが、一般的に考えると配偶者、直系血族(親や 子など)、および兄弟姉妹が引き取るのが道義的といえます。
ただし、この点は感情面の問題です。
生前、故人との関係によっては引き取りたくないと感じる方もおられるでしょう。
道義的に引き取りはしたほうがいいのはもちろんですが、あとはご自身の気持ちと向き合って、どうするのか判断できるとよいでしょう。
2.孤独死が発見されたあとの流れ
次に孤独死が発見されたあとの流れについてご紹介します。
身内の孤独死が発覚したあと、どのような流れになるのかを知って、どんな行動をどのタイミングで行うのか理解しておきましょう。
孤独死が発見されたあとの流れ
- 1 発見者が、警察もしくは救急へ連絡
- 2 警察のほうで現場検証後、遺族へ連絡する
- 3 遺族が警察から遺体の引き取りを行う
- 4-1【遺族が引き取りを行う場合】葬儀を行う
4-2【遺族が引き取り拒否をしている、もしくは遺族が見つからない場合】行旅死亡人として自治体が直葬する - 5 特殊清掃・遺品整理
2-1. ①発見者が、警察もしくは救急へ連絡
孤独死が疑われる状況を発見した場合には、発見者が警察か救急へ連絡します。
倒れているけれど亡くなっているかわからない場合は、救急を呼んで判断をします。
発見したときにはすでに腐敗が進行しているなど、明らかに亡くなっている場合には、現場検証をして事件性が無いことを確認してもらうため、警察に連絡します。
2-2.②警察のほうで現場検証後、遺族へ連絡する
警察は家宅捜索や現場検証を行って、事件性がないかどうかを調べると同時に、検死も行います。
検死によって身元がはっきりし、事件性のない「自然死」だと判断されれば、「死体検案書」と遺体を遺族へ引き渡すために連絡をします。
警察が役所に問い合わせて、公的書類などから遺族関係を調べ、子ども、兄弟、親戚などの血縁関係順に連絡していくのが一般的です。
もし身元が判明しない場合には、遺体は専用の保管庫で保管することになります。保管料は一泊2,000円程度です。
2-3.③警察から遺族に対して遺体の引き取りをするよう連絡が入る
遺族に対して警察から連絡があった場合には、警察から遺族に対して遺体の引き取りをするように連絡が入ります。
ただし、孤独死の場合は親族が一切見つからないというケースや、親族が発見できたとしても、生前の関係が希薄であったり、一切関わっていないために引き取り拒否をされる方も一定数おられます。
2-4.④-1【遺族が引き取りを行う場合】葬儀を行う
遺族が遺体を引き取る場合には、遺族の手によって葬儀を行います。
ただし孤独死の場合は、引き取ってすぐに現地で火葬することが多い傾向にあります。
というのも、発見までに時間がかかって腐敗が進んでしまい、衛生上すぐに火葬する必要があったり、一般車両ではできない「遺体の搬送」を霊柩車に依頼する場合、遺体の安置所から葬儀場所まで距離があるとそれだけ費用がかさんでしまうためです。
2-5.④-2【遺族が引き取り拒否をしている、もしくは遺族が見つからない場合】行旅死亡人として自治体が直葬する
もし親族が一人も見つからない、もしくは引き取り拒否によって引き取り手がいない場合には、先にも述べたとおり、故人は「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」として扱われます。そして自治体が直葬(火葬)を行い、遺骨は無縁仏として納められます。
これらの葬儀費用は、まず故人の財産から支払われます。そして、それでも不足している場合には、遺族が負担することになっています。
ただし、故人本人が生活保護受給者だったり、遺族が生活保護受給者であったりする場合は、葬儀を行う最低限の金額が支給される事になっています。
詳しくは以下のとおりです。
故人、もしくは遺族が生活保護受給者であった場合の葬儀資金の支給について
- 直葬と無縁仏として合同墓に納めるための葬儀費用は、故人の財産をあて、不足分は遺族の負担となる。
- 遺族が生活保護受給者で葬儀費用の支払いができない場合は、自治体へ「葬祭扶助の申請」ができる(生活保護法18条第1項)。
また、故人自身が生活保護受給者である場合、もしくは故人が遺留した財産では葬祭費用に満たない場合、葬祭を行う者に対して扶助が行われる(生活保護法18条第2項)。
ただし、故人に扶養義務者がいない場合に限り認められる。
最低限の葬儀を行える費用「20万円前後」が支給され、直葬のみ行われる。
2-6.⑤特殊清掃・遺品整理
孤独死の場合、故人が亡くなった直後に発見されていれば特別な清掃は必要ありませんが、ある程度の時間が経ってから発見された場合には、特殊清掃業者に依頼する必要があります。
遺体の腐敗が進んで体液が床に染み出してしまったり、臭いが部屋中についてしまったりするためです。
特殊清掃とは、事故や自殺、災害、孤独死、ゴミ屋敷などの理由で、通常の掃除では対応しきれない汚れがついてしまった箇所を、専用の機材や薬剤を使って行う清掃です。物理的なゴミや汚れの撤去だけでなく、目に見えない雑菌や臭いまで含めて、もとの状態にまで回復させるものです。
また、故人の財産を相続する場合には、遺品整理を行います。
遺品整理とは、故人の遺品を以下のように分類し、それぞれに合った適切な処分をすることです。
分類 | 処分方法 |
---|---|
遺産相続に関する書類等 | 所定の手続きに沿って法定相続人が手続きする |
金銭的な価値のある物品等 | 売却または形見分けする |
思い出の品 | 親族や故人と生前付き合いのあった方に形見分けする |
廃棄処分するもの | 自治体のルールに従って廃棄する |
基本的には、遺族の方が費用負担して不動産を原状回復し、遺品を整理できるように業者に依頼するのが一般的です。
遺体やお骨の引き取り拒否をする場合でも、故人の財産を相続する場合には不動産の管理者から「特殊清掃費」や「遺品整理費」、故人の腐敗がひどく、壁や床の奥にまで体液がしみてしまっている場合には大規模な修繕費用を求められることが多い傾向にあります。
そのような費用を負担するのが難しい場合に、相続放棄を選択される方も一定数おられます。
3.身内が孤独死した場合に優先的に行うべきは「相続手続き」
身内が孤独死された場合には、優先的に「相続手続き」を行いましょう。
たとえ孤独死をされた故人の方が親族との関係が希薄である、もしくは縁を切っていたとしても、相続は行われます。
引き取り拒否と遺産相続は別の話であり、引き取り拒否をしても、「戸籍上つながりがある場合には相続の手続きが必要になる」と法律上の決まりがあるのです。
ただし孤独死された方から相続する場合、そもそも交流がなかったり、存在自体知らなかったりするなど、相続人が被相続人に関する情報を一切知らないということも多く、相続の手続きのためにするべき行動がわからないというケースがよくあります。
そこで、相続人が取るべき行動を以下3つご紹介します。
身内が孤独死した場合の相続手続き
- 被相続人の財産情報を調査する
- 相続をするのか相続放棄をするのかを判断する
- 相続手続きをする
3-1.被相続人の財産情報を調査する
まずは被相続人(亡くなられた方)の財産情報を調査します。
孤独死の場合、被相続人の情報がほとんど無いことが多いので、まずは被相続人の情報を得ることが重要なのです。
そうすることで相続をするのか、相続放棄をするのかどうかを判断できるようになります。
具体的には以下のような調査を行いましょう。
被相続人の財産情報の調査について
◆相続財産の有無とその内容を調査する
相続手続きでは、相続対象となる遺産があるのかどうか、どんなものがあるのか調査する。
その対象は、被相続人のプラス財産とマイナス財産を含める、すべての財産のこと。
たとえば、土地、預貯金、家財道具などのプラス財産、住宅ローン、借金などのマイナス財産など。
相続放棄をしない限り、マイナス財産もプラス財産も含めて、すべてを相続することになる。
マイナス財産があるかどうかの調査は優先的に行うべき。
◆相続財産を評価する
残った財産の価値を知るためにも、相続財産を適正に評価・査定してもらうことが重要。
たとえば不動産であれば、実際の取引相場価格を調べたり、不動産鑑定士に鑑定を依頼したりする。また家財道具を鑑定士に査定してもらうなど。
相続をするのかどうかの判断材料にするとよい。
◆相続財産調査は弁護士への依頼がおすすめ
実際にこれらの財産情報調査を行うためには、時間も手間もかかるため、弁護士に依頼をすると良い。相続財産調査だけでなく、遺産分割でもめそうな場合や、すでにトラブルとなっている場合にも対応してもらえたりするなど、安心して依頼できる。
ただし、財産の有無に関わらず相続放棄をしたい場合は、財産情報を調査することなく行うことも可能です。
3-2.相続をするのか相続放棄をするのかを判断する
法律上、人が亡くなると相続が開始されますが、相続人は相続をするのか、相続放棄をするのか判断しなければいけないと決まっています。
とくに相続放棄を選択する場合には、家庭裁判所にその旨を相続開始から3ヶ月以内に申し立てする必要があるため、早めに行動する必要があります。
財産調査でわかった情報をもとに、以下を参考にしながら相続をするのか相続放棄をするのかを判断しましょう。
相続・相続放棄のメリット・デメリット
●相続
メリット
- 遺産がプラスになる場合は、自分の資産にできる
デメリット
- 被相続人が負債を抱えている場合には、返済の義務が生じる
- 遺産分割協議をする過程でトラブルになる可能性がある
●相続放棄
メリット
- 被相続人がクレジットカードや住宅ローンなどで借金をしていた場合でも、支払の義務が生じない
- 相続人同士で集まって遺産分割をする過程でトラブルになるケースも多いが、そうしたトラブルに関わらなくて良くなる
- 相続放棄をすることで、自身が相続する分がほかの相続人に配分されるため、ほかの相続人の遺産取得分を増やせる
デメリット
- 不動産や高額な預貯金等のプラスの資産があったとしても、相続できなくなる
3-3.相続手続きをする
相続するのか、相続放棄をするのかを判断したら、実際に手続きを行います。
3-3-1.相続する場合
相続する場合には、以下の手続きが必要になります。
相続する場合に必要な手続き
◆相続税の申告
被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内に相続税の申告をする必要がある。
◆遺産分割協議書の作成
相続人が複数人いる場合には、遺産分割協議で話し合いを行い、その内容を「遺産分割協議書」にまとめておく。
◆相続登記
被相続人から相続した不動産に関して、相続によって所有権移転登記をすることをいう。
期限は特にないが、登記をしないまま長年放置すると権利関係が不明瞭になって処理が複雑になってしまう。できる限り、権利関係が確定した時点で相続登記を速やかに行っておくべき。
3-3-2.相続放棄する場合
相続放棄をする場合は3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申し立てする必要があります。
以下の書類を用意して家庭裁判所への郵送が必要です。
相続放棄する場合に必要な書類
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票
- 相続放棄する人の戸籍謄本
- 収入印紙(800円)
◆子が相続放棄する場合
1〜4に加えて、
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
が必要
◆孫が相続放棄する場合
1〜4に加えて、
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本
が必要
◆兄弟姉妹(もしくは甥・姪)が相続放棄する場合
1〜4に加えて、
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
もし、被相続人の兄弟姉妹も死亡している場合には、
- 兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本
が必要
4.身内が孤独死して相続手続きを行う前に気をつけるべきこと
身内が孤独死された場合、相続手続きを優先して行うべきであるとお伝えしましたが、実は相続手続きを行う前に気をつけるべきことがあります。
というのも、相続するのか、相続放棄をするのかを判断する前に、ある行動をすると相続を承認したとみなされてしまう可能性があるのです。
そのある行動とは、「遺品整理」です。
以下で詳しく解説していきます。
4-1.遺品整理をすると相続を承認したとみなされてしまう可能性がある
法律上、「相続人が相続財産の全部、または一部を処分したとき、単純承認をしたものとみなす」と決まっているため、相続手続きを行う前に遺品整理を行い、財産の処分をしてしまうと、もし相続放棄をしたくてもできなくなってしまいます。
このときの処分とは、以下のような内容です。
処分に該当する内容
- 故人のお名義の持ち家や車を売る
- 故人の資産の大部分である銀行預金500万円を全額引き出す
- 遺産分割協議を行う など
一方で処分に該当しないのは以下のような内容であると、これまでの裁判の判例でわかっています。
処分に該当しない内容
- 経済的に価値のない身の回りの品を引き取ること
- 故人の財産から墓石や仏壇を購入する
- 故人の死亡保険金を遣って故人の借りていたお金を返す など
4-2.孤独死の場合は、相続前に遺品整理をしても「相続を承認した」とみなされないケースがある
基本的には相続前に遺品整理をすれば「相続を承認した」とみなされますが、場合によっては相続前の遺品整理や特殊清掃をしても、例外とみなしてもらえるケースがあります。
それは孤独死によって、遺体が腐敗してしまったことによる臭いや汚れによって、近隣住民や他人に迷惑や危害が加わるような場合です。このような場合は、相続前に遺品整理や特殊清掃をしても問題ないとするのが一般的です。
ただし4-1でもお伝えしたとおり、やはり財産にかかわるものを処分してしまうと「相続を承認した」とみなされてしまう可能性が高いので、孤独死による相続前の遺品整理や特殊清掃を行う場合には注意が必要です。弁護士に依頼して、遺品ごとにどのように扱えばいいのかを相談すると、スムーズに遺品整理や特殊清掃を進められます。
したがって、遺体の腐敗がなく急いで特殊清掃や遺品整理を行う必要のない状況で、相続放棄する可能性がある場合には、遺品整理は相続前に行わないようにしましょう。
一方で、あまりにも遺体の損傷が激しく、部屋の中の匂いがひどかったり、汚れが酷くて近隣住民に迷惑がかかる場合には、遺品の取り扱いについて弁護士に判断を仰ぎながら、業者に特殊清掃・遺品整理を依頼しましょう。
特殊清掃は少し料金が高くなってしまっても、専門的な知識と技術を持つ特殊清掃業者に依頼すべき
これまでの経験や独自の清掃技術、資格を活かして、原状回復を行ってくれます。
どうしても身内で清掃しようとしても知識がなくて清掃が難しかったり、遺体の腐敗がひどく、感染症などを引き起こす危険性があります。
その点特殊清掃業者奈良、現場の状況を見て必要な清掃を判断し、安全に配慮して効率よく作業を行ってもらえます。
リスクベネフィットは、特殊清掃に特化した数少ない特殊清掃専門会社です。
これまで数多くの火災現場や水害復旧工事、孤独死の現場にて、特殊清掃を行ってきた実績と技術があります。
高い技術と独自の特許技術は高く評価されており、最近ではダイヤモンドプリンセス号の除菌にも携わりました。
特殊清掃料金を詳しく知りたい場合や特殊清掃に関するお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
5.まとめ
本記事では、身内が孤独死された場合に引き取り拒否はできるのかどうか、孤独死が発見されたあとの流れ、身内が孤独死された場合に相続手続き、相続手続きを行う前に気をつけるべきことなどをお伝えしました。
ここで改めて本記事の内容をおさらいしましょう。
身内が孤独死した場合引き取り拒否は、法律を違反するものではないものの、道義的には引き取るのが一般的
孤独死が発見されたあとの流れ
- 1 発見者が、警察もしくは救急へ連絡
- 2 警察のほうで現場検証後、遺族へ連絡する
- 3 遺族が警察から遺体の引き取りを行う
- 4-1【遺族が引き取りを行う場合】葬儀を行う
4-2【遺族が引き取り拒否をしている、もしくは遺族が見つからない場合】行旅死亡人として自治体が直葬する - 5 特殊清掃・遺品整理
身内が孤独死した場合に優先的に行うべきは「相続手続き」
- 被相続人の財産情報を調査する
- 相続をするのか相続放棄をするのかを判断する
- 相続手続きをする
身内が孤独死して相続手続きを行う前に気をつけるべきことは「遺品整理」
本記事の内容が参考になれば幸いです。