「退去費用が敷金では足りなくて、高額な追加請求をされた!」
退去費用に高額な請求をされた場合、思わぬ金額に困惑してしまっているという人もいるでしょう。
後ほど詳しく解説しますが、退去費用とは「原状回復費用」と「契約書の特約に記載された費用」をあわせたもので、この2つの合計金額が敷金を下回れば敷金が返還され、上回れば追加の請求があります。
ただし、請求された内容が必ずしも正しいとは限りません。
請求内容の確認を行わなければ支払わなくてもいい費用まで支払ってしまう可能性があるのです。
この記事を読むことで、請求された退去費用は妥当な金額なのかが判断できるようになります。
また、退去費用の請求におかしな点があったり、自分では判断ができない場合にどのように対処すべきかについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
1.退去費用の相場
株式会社プラスワンが行った退去費用に関するアンケートによると、退去費用の平均額は約63,000円でした。
では、間取り別で退去費用の平均金額を見てみましょう。
間取り | 退去費用の平均金額 |
---|---|
1R・1K・1DK・1LDK | 49,980円 |
2K・2DK・2LDK | 79,924円 |
3K・3DK・3LDK・4K・4DK・4LDK | 90,139円 |
部屋数が増えるほど、退去費用の金額は上がっています。
部屋の間取りと平均金額から考えられることは、 退去時に支払うハウスクリーニングの費用だけで済んでいる人が多いのではないかということです。
ハウスクリーニングだけで済んだ場合、敷金からハウスクリーニングの費用だけが引かれて返還されます。
しかし、敷金では退去費用が足りず、さらに数万~数十万円を請求されたという人も中にはいます。
本当に部屋がひどい状態で請求されている場合もあれば、支払う必要のない費用まで請求されていることもあるでしょう。
その高額な請求が本当に妥当な請求なのかを判断するためにも、
- 支払わなくてはならない費用
- 貸主と借主の負担割合
このようなことを、しっかり知っておく必要があるのです。
2.退去時に支払うべき費用と支払う必要がない費用
退去時に支払うべき費用を理解していないと、支払う必要のない費用まで請求されていても気付けない可能性があります。
余計な費用が請求に含まれていないかがわかるようになるためにも、「支払うべき費用」と「支払う必要のない費用」の違いを理解しておきましょう。
2-1.退去時に支払うべき費用
退去時に支払う必要がある費用には以下の2つがあります。
- 故意または過失による傷・汚れ・においなどの原状回復費用
- 特約で定められている費用
それぞれ、どのような費用なのかについて説明していきます。
2-1-1.故意または過失による傷・汚れ・においなどの原状回復費用
原状回復費用として請求されるのは、管理を怠ったたり、故意や過失で傷や汚れ、においがついた部分の修繕費用です。
例えば、以下のようなものは原状回復費用が発生します。
- 飲み物などをこぼしたところを拭かず、フローリングの表面が剥がれた
- コンロ周りをまったく掃除せず、ひどい油汚れがこびりついている
- 結露を放置し、壁にカビが生えている
- 空調の水漏れを放置し、壁が腐食している
- ペットが柱をひっかいて傷だらけになった
- タバコを吸っていたため、部屋にヤニ汚れとにおいが付いた
上記はあくまでも一例ですが、ペットもおらずたばこも吸わず、定期的掃除をしていればほとんど原状回復費用はかからないということです。
空調の水漏れや結露は自分のせいではない気がするかもしれませんが、部屋を借りている間は管理をする義務が発生します。
空調の水漏れ放置や結露の放置はその義務を怠ったとみなされるため、修繕費用を請求されるのです。
2-1-2.特約で定められている費用
原状回復費用の他に、契約書の中で特約が記載されている場合はその費用が発生します。
特約には、本来であれば貸主が支払うべき費用を借主が退去時に負担するという内容が記載されています。
よく記載されているのが「ハウスクリーニング」の費用です。
そのため、部屋をきれいに使用して原状回復費用がかからなかったとしても、敷金からハウスクリーニングの費用が引かれることがよくあります。
特約には金額も明記されているため、確認をしておきましょう。
特約は絶対に確認が必要
ほとんどの貸主が退去時のハウスクリーニング費用を特約に記載していますが、まれに特約に無いのにハウスクリーニング代を請求してくることもあります。
気付かずに支払ってしまった場合は契約書を確認しなかった借主の責任になるため、必ず契約書を確認してから精算書にサインをしなくてはなりません。
また、特約には支払うべき金額もあらかじめ記載されていなければならないため、金額が記載されていない場合はその特約は有効ではありません。
2-2.退去時に支払う必要がない費用
退去時に支払う必要がない費用とは、つまり貸主が負担すべき費用ということです。
例えば、以下のような場合の修繕費用は貸主負担となります。
- 家具を設置していたことで、設置跡やへこみができていた
- 冷蔵庫をどかしたら壁が黒ずんでいた
- 壁紙が日焼けしている
- 設備機器が寿命で壊れた
冷蔵庫を置いている壁が黒ずんでしまっていた場合は一見借主の過失のような気がするかもしれませんが、これは普通に使用しているだけでついてしまう汚れであるため、「通常損耗」とみなされます。テレビなども同様です。
家具による床のへこみも、ただ家具を置いていただけなので修繕は貸主負担になりません。
3.高額な退去費用が妥当か判断するには「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認
賃貸物件の退去時に、借主には原状回復義務があります。
しかし、「原状回復」と言われてもどこからどこまでが当てはまるのかすぐに思いつくという人は少ないのではないでしょうか。
この原状回復に関して非常に役立つのが、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
退去費用をめぐるトラブルを防止する目的で作成されたもので、退去費用の目安となっています。
出典:国土交通省(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について)
しかし、このガイドラインを知っている人はかなり少なく、前述した株式会社プラスワンが行った退去費用に関するアンケートでは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を知らなかった人は74%という結果になりました。
出典:PR TIMES(賃貸物件の退去費用|請求額は平均63,283円!74%の人が『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を知らずに支払い)
ガイドラインを知っていると、正当な金額の退去費用を請求されているのかどうかの判断ができるようになります。
ガイドラインの内容を詳しく説明していきますので、退去費用を請求された際に参考にしてください。
3-1.「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は退去費用が妥当か判断するために重要
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には以下のようなことが記載されています。
- 賃借人の原状回復義務とは何か
- 建物の損耗等について
- 賃借人の負担対象事象
- 経過年数の考え方の導入
- 賃借人の負担対象範囲
自分が汚したり傷つけたものに対して、修繕費用を支払わなくてはならないことは理解していても、実際にどの範囲まで支払わなくてはないのかは難しいポイントです。
例えば、壁紙の一部が10cmほど破けてしまった場合は、以下の3通りの請求が考えられます。
①破けてしまった部分を含む1㎡のみ
②破けてしまった部分を含む1面
③破けてしまった壁紙のある部屋全体
③で請求された場合、「部分的にしか破けていないのに!」と借主が主張し、貸主は「一部だけ壁紙を変えたらその部分だけ色味が合わなくなる」と主張してトラブルに発展することもあります。
ガイドラインではそのようなトラブルを防ぐために①と②の費用請求を認めており、破けた部分以外は請求すべきではないとしているため、借主は「全面の張り替え費用の負担は妥当ではない」と主張できるのです。
また、後ほど詳しく説明しますが、壁紙など修繕箇所によっては経年変化も考慮されて貸主と借主の負担割合が決定します。
何に経年変化が考慮され、居住年数ごとにどの程度負担すべきなのかもガイドラインに詳しく記載されています。
3-2.原状回復費用は故意や過失がなければかからない
前述した通り、賃貸物件は借主が退去する際に「原状回復義務」が生じます。
ガイドラインの中では、「賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗に対して原状回復義務がある 」と記載されています。
つまり、
- 故意に汚したり壊した部分
- 不注意で汚したり壊した部分
- 管理や掃除を怠ったことでできた汚れ
このような部分に関して、原状回復義務があるということです。
以下は実際にガイドラインに記載されている「賃貸人・賃借人の修繕分担表」です。
画鋲程度であれば通常使用の範囲内とされていますが、釘やネジ穴に関しては借主負担になるといったようにわかりやすく記載されているため、修繕費用がかかるかどうかの判断に迷った場合は上記の表を確認しましょう。
3-3.経年変化と通常損耗による修繕費用は貸主負担
ガイドラインでは、以下のように「経年変化」と「通常損耗」の修繕費用は家賃に含まれているという考えがあります。
そのため、「経年変化」と「通常損耗」の修繕費用は借主が負担すると二重の支払いとなるため、貸主が負担すべきであるとされているのです。
3-3-1.経年変化とは
経年変化とは、時間の経過とともに品質が下がることです。
例えば、壁や床は日光が当たることで日焼けをしたり、色褪せたりします。
時間が経つことで自然と劣化していくものに関しては、経年変化が考慮された原状回復費用が請求されるのが妥当です。
3-3-2.通常損耗とは
前述した通り、通常損耗は普通に生活をしていてもできる傷や汚れのことです。
- 家具を置いたことによる床のへこみ
- 冷蔵庫やテレビ裏の電気焼け
- 画鋲の穴
- エアコン設置による壁のビス穴や跡
などが該当します。
特約で通常損耗の範囲内の支払いが記載されていなければ、通常損耗の修繕費は全額貸主負担です。
3-4.退去費用は経年変化を考慮した原状回復費用
経年変化はすべての設備に適用されるわけではありません。
例えばフローリングは、部分的に補修をおこなってもフローリング全体の価値が高まるわけではないため、経年変化は考慮されません。
経年変化が考慮されるものとそうでないものは以下の通りです。
修繕箇所 | 経過年数の考慮 |
---|---|
壁紙 | 6年で残存価値が1円となるような負担割合を算定 |
カーペット | 6年で残存価値が1円となるような負担割合を算定 |
クッションフロア | 6年で残存価値が1円となるような負担割合を算定 |
フローリング | 経過年数は考慮しない |
畳 | 経過年数は考慮しない |
ふすま | 経過年数は考慮しない |
柱 | 経過年数は考慮しない |
このように、
- 壁紙
- カーペット
- クッションフロア
この3つは6年で残存価値が1円まで下がり、居住年数によって負担割合が減少していきます。
例えば壁紙の張り替えに4万円がかかった場合、居住年数によって以下のように負担額が変化します。
- 居住年数1年…約33,400円
- 居住年数3年…20,000円
- 居住年数6年以上…1円
このように、経年変化が考慮されるものは居住年数によって支払い金額が大きく変わるのです。
そのため、故意や過失によって汚したりしてしまった場合でも、全額負担とはならないことを覚えておきましょう。
3-5.原状回復費用の負担単位
原状回復費用を借主が負担する場合の負担単位は、トラブルになりやすい点です。
しかし、ガイドラインでは先ほど説明した通り、どこまで借主が負担すべきかも記載されています。
修繕箇所 | 借主の負担単位 |
---|---|
壁紙 | ㎡単位が望ましいが、毀損した箇所を含む1面分までは借主負担としてもやむをえない |
フローリング | 原則㎡単位だが、毀損などが複数箇所の場合は居室全体 |
カーペット・ クッションフロア | 毀損などが複数箇所の場合は居室全体 |
畳 | 原則1枚単位 |
ふすま | 1枚単位 |
柱 | 1本単位 |
例えば、壁紙の一部が破けてしまった場合は、その傷の部分を含む㎡単位か1面の張り替え費用が請求されなければなりません。
部屋全体を色合わせのために張り替えると壁紙の価値が高まることから、ガイドラインでは毀損箇所以外の張り替えは「グレードアップ」に相当するとされているからです。
3-6.原状回復義務の判断基準
経年変化と通常損耗について説明しましたが、あらためて修繕箇所別に原状回復義務の判断基準をまとめたものを見てみましょう。
修繕箇所 | 原状回復義務の有無 | 状態 |
---|---|---|
壁紙(クロス) | 無し | 画鋲の穴・ポスターなどの跡・家電裏の電気焼け・日焼けや色褪せ |
有り | 結露放置によるカビ・落書き・タバコのヤニ汚れ・壁紙の破れ | |
フローリング | 無し | ワックスの剥げ・家具設置のへこみ・色褪せ |
有り | ひっかき傷・ものを落とした傷・ペットの爪痕 | |
水回り | 無し | 定期的に掃除がされており、一般的な範囲の汚れ |
有り | 掃除がされておらず、油汚れ・カビ・水垢がひどい状態 |
ガイドラインを知ることで、このように「何に原状回復費用がかかるのか」が理解できるようになります。
退去費用が正当なものかを判断するためにも、これらの内容を覚えておきましょう。
4.高額な退去費用を請求された場合に確認すべき5つのチェックポイント
高額な退去費用を請求されたらすぐにサインするのではなく、まずは金額の内訳を確認しましょう。
詳しい内訳が記載されていないこともあるため、その場合は明細書を出してもらってください。
明細書・契約書・原状回復をめぐるトラブルとガイドラインを見ながら、以下のことを確認しましょう。
- 通常損耗の範囲内の損傷まで請求されていないか
- 経年変化が考慮されているか
- 原状回復費用の負担範囲を超えた請求項目が含まれていないか
- 支払う必要のない費用が含まれていないか
- 相場よりも高額な費用が請求されていないか
これらを確認することで、減額できる可能性がありますので、1つずつ説明していきます。
4-1.通常損耗の範囲内の損傷まで請求されていないか
請求されている項目に、通常損耗の範囲内の項目がないか確認しましょう。
例えば、
- 過失が無いのに壁紙の張り替え費用を請求された
- 冷蔵庫裏の電気焼け部分の壁紙張り替え費用を請求された
- フローリングに傷を付けたりしていないのに張り替え費用を請求された
などです。
ガイドラインと照らし合わせて、貸主が負担すべき費用が含まれていないか確認しましょう。
4-2.経年変化が考慮されているか
経年変化が考慮されずに請求されることもあるため、壁紙などの請求がある場合は注意が必要です。
例えば、賃貸物件でタバコを吸っていたとします。
その部屋のヤニで汚れた壁紙30㎡をすべて張り替えることになり、壁紙の単価が1,000円/㎡だった場合、張り替え費用は【30㎡ × 1,000円 = 30,000円】となりますが、3年住んでいれば経年変化が考慮されるため、負担額は50%の15,000円にならなくてはいけません。
「ペット」や「タバコ」などの要因があった場合は経年変化を考慮しなくてもいいと思っている貸主もいるため、壁紙などの請求がある場合は必ず居住年数と負担割合があっているかを確認しましょう。
4-3.原状回復費用の負担範囲を超えた請求項目が含まれていないか
傷や汚れを付けてしまった箇所の原状回復費用に対して、ガイドラインに記載されている負担範囲を大幅に超えた請求をされることがあります。
例えば、
- フローリングに5cmほどの傷を付けてしまっただけなのに、フローリングすべての張り替え費用を請求された
- 壁紙の一部を破いてしまったことで、部屋全体の張り替え費用を請求された
などです。
前述した通り、部分的に傷や汚れを付けたからといって、1室すべての張り替え費用を支払う必要はありません。
ガイドラインで決められた負担範囲以上の請求をされた場合は、支払う必要がないことを主張しましょう。
4-4.支払う必要のない費用が含まれていないか
原状回復費用の中に、支払う必要がない費用が含まれていることがあります。
例えば、
- 破損していない網戸の張り替え費用
- 汚したりしていない畳の表替えの費用
- ワックスの費用
などです。
これらは次の入居者を迎えるための準備費用にあたるため、退去費用に含まれるのは妥当ではありません。
しかし、畳の表替えなどは特約に含まれている可能性もあるため、契約書の特約をチェックしてみましょう。
4-5.相場よりも高額な費用が請求されていないか
まず、各箇所の修繕費用相場を見てみましょう。
修繕箇所 | 相場 |
---|---|
壁紙 | 800~1,000円/1㎡ |
フローリング | 8,000~15,000円/1㎡ |
畳 | 表替え…3,000~5,000円/1畳 交換…10,000~25,000円/1畳 |
柱 | 10,000~60,000円/1本 |
ふすま・障子 | ふすまの張替…3,000~8,000円/1枚 ふすまの交換…10,000~30,000円/1枚 障子の張替…2,000~8,000円/1枚 |
ハウスクリーニング | 25,000~50,000円/1R・1K |
おおよそ上記の金額が相場ですが、相場よりもかなり高額な金額を請求されることもなくはありません。
例えば、壁紙の張り替えが2,000円/㎡だったり、ハウスクリーニングが1Kなのに100,000円請求されるということも。
使用されている素材などにもよりますが、相場から大きく外れた費用を請求されているのであれば、高めに金額を請求してきている可能性も考えられるでしょう。
おかしいと感じる請求があった場合
請求されるべきではない項目があったり、単価が相場とかけ離れている場合は、こちらから相手に減額を要求しなければなりません。
もしも、おかしいと感じる項目があった場合や、自分では判断が付かない場合は「6.高額な退去費用を請求された場合の対処法3STEP」をご覧ください。
5.退去費用が高額になる4つの要因
退去費用が高額になる要因として、以下の4つが考えられます。
- 不注意や故意の損傷がある場合
- ほとんど掃除をしていなかった場合
- ペットを飼っていた場合
- タバコを吸っていた場合
これらが原因で汚損や破損があった場合、原状回復義務の範囲に含まれてしまうため退去費用も高くなります。
これらの要因でどのような汚損や破損があった場合に、原状回復をしなくてはならないかについて解説します。
5-1.不注意や故意の損傷がある場合
フローリングの傷や壁紙の破れなどは、原状回復義務の範囲に含まれると前述しましたが、修繕箇所ごとに負担範囲が決められているため、範囲の広さによっては金額はかなり高額になるでしょう。
例えばフローリングの場合、一箇所に10cm程度の傷がついているだけであればさほど修繕費用はかかりません。
しかし、家具を動かしたりテーブルや椅子の脚を保護せずに引きずった結果、部屋の至る所に傷がついてしまった場合は1部屋すべてのフローリングを張り替えなければならなくなります。
そして、それは全て借主負担となるため、費用も高額になるのです。
また、ふすまや障子に穴を開けてしまっても、張り替え費用は数千円で済みますが、重い物をぶつけるなどしてドアに穴を開けてしまった場合、ドア自体の交換になるため費用もその分高額になるでしょう。
5-2.ほとんど掃除をしていなかった場合
ほとんど掃除をすることがなく、キッチンは油汚れに埃がこびりついて黒ずんでいたり、お風呂がカビだらけだったり、壁紙にカビやシミがついてしまっている場合には、専門業者を使って汚れを取らなければいけなくなります。
人によっては換気もせず布団を敷きっぱなしで過ごした結果、布団を敷いていた部分がカビて床が変色していた…なんてことも。
破損などをしていてくても、この状態では借主の管理義務を怠ったとみなされるため、修繕費用などが高額になります。
住んでいる間の定期的な掃除や、たまに行う大掃除は非常に大切なことなのです。
5-3.ペットを飼っていた場合
ペットを飼っていると、ペットがひっかいたり走り回ってできた傷や、壁や床に染みつくペットのにおいに関しての修繕費用がかかります。
ペット可の物件でも、ペットを実際に飼うかどうかは借主の自由なので、ペットがつけた傷やにおいは「故意によるもの」として考えられます。
ペットがつける傷やにおいに対してなにも対策をしていないと、傷つく範囲が増えて修繕費用が高額になったり、においが強く染みつくことで、脱臭をしなければならないことも。
ペットを賃貸で飼育するのであれば、傷対策やにおい対策をしておく必要があるでしょう。
ペットを飼っている場合の退去費用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
5-4.タバコを吸っていた場合
タバコを吸っていると、部屋全体の壁紙がヤニで黄ばんでしまうため、部屋全体の壁紙を交換しなければならず、張り替え費用がかかります。
一見そんなに黄ばんでいないように見えても、タバコで黄ばんだ壁紙は、天井と壁の角部分のみ白さが残るため、すぐにわかります。
壁紙だけであれば経年劣化が考慮されますが、においが消えなければ脱臭が必要となるため、より費用がかかる可能性もあることを覚えておきましょう。
6.高額な退去費用を請求された場合の対処法3STEP
高額な請求をされ、明細を確認したら支払う必要のない費用が含まれていた場合、以下のように対応しましょう。
6-1.STEP1.明細を確認して減額を要求
まず、原状回復費用の明細と契約書を確認して、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に照らし合わせながら、支払う必要はないと思う項目をピックアップしましょう。
そして、貸主や管理会社にその項目を伝えて減額してもらうように話してみてください。
この時、「ガイドラインではこう記載されている」と伝えると効果的です。
常識的な貸主や管理会社であれば、この段階で減額されることがほとんどですが、まれに相手がガイドラインを理解していない場合があるため、減額されなければ次のステップに進みましょう。
6-2.STEP2.専門家にアドバイスをもらう
貸主や管理会社がまともに取り合ってくれない場合や、請求されている費用が妥当な物なのか判断ができない場合は、以下の窓口に相談してみましょう。
- 消費者庁の相談窓口
- 相談員が対処方法のアドバイスをしてくれる
- 消費生活に関する相談窓口
- 相談員が情報提供やトラブル解決のためのアドバイスをしてくれる
- 賃貸住宅市場の健全化を目的とする協会
- 相談フォームから連絡をすると、折り返し電話で回答してくれる
これらに相談をして、アドバイス通りにしても解決しない場合は、弁護士に相談するか次のステップに進みましょう。
6-3.STEP3.民事調停をする
STEP2で紹介したようなところに相談をしても解決しない場合は、簡易裁判所で民事調停の申立てをしましょう。
「裁判所」「調停」と聞くと非常に手間がかかりそうなイメージがありますが、実は手続きは簡単です。
調停では、ポイントを絞った話し合いが行われるため、解決までの時間が長くなりません。
一般的に2〜3回調停期日が開かれ、3ヶ月以内に調停が成立するなどして解決しています。
費用も申立ての金額10万円ごとに500円の手数料がかかるだけで済むので、大きな出費の心配もありません。
民事調停の流れは以下の通りです。
では、申立てから調停成立までの流れを見てみましょう。
6-3-1.申立て~当事者呼び出し
調停を申し立てるためには、まず裁判所の申立書に必要事項を記入して、申立ての金額に合わせた手数料分の印紙を貼り付けて、裁判所に提出します。
申立書に問題がなければ、申立書の提出から1~2ヶ月ほどで初回の調停期日となります。
事前に裁判所から日時と場所を指定されるので、指定された通りに裁判所に行きましょう。
6-3-2.調停期日
調停開始までの待合室は、被害者と加害者が別部屋となっているので最初から最後まで顔を合わせることはありません。
調停委員に呼ばれたら調停室に移動し、調停員に経緯を話します。
その後被害者と入れ替えで加害者が調停室に入り、同じように経緯を話します。
その後も被害者と加害者を入れ替えて調停委員を介した話し合いがおこなわれ、争点を明らかにしていくのです。
争点が明らかになったら、最後に次回期日が決められます。
6-3-3.調停成立
調停期日を2~3回ほど行い、双方が納得できる和解案が形成されたら「調停成立」になります。
調停成立は原則として後から不服を唱えることができません。
もし、相手が出てこない場合や、和解案の折り合いが付かない場合は調停不成立となりますが、不成立から2週間以内に地方裁判所、もしくは簡易裁判所に訴訟を提起できます。
7.まとめ
退去時に支払わなくてはならない費用は、「原状回復費用」と「特約で定められている費用」です。
この2つを合わせたものが退去費用として請求され、金額が敷金を上回った場合は追加で請求されます。
退去費用が妥当な金額なのかを判断するために役立つのが、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
ガイドラインには、以下の内容が記載されています。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
- 賃借人の原状回復義務とは何か
- 建物の損耗等について
- 賃借人の負担対象事象
- 経過年数の考え方の導入
- 賃借人の負担対象範囲
経年変化や通常損耗とはどんなものなのか、破損や汚損に対してどの範囲を負担する必要があるのかが記載されており、ガイドラインと照らし合わせることで退去費用の請求におかしな点がないかを確認することが可能です。
高額な請求をされた場合はまず明細書を出してもらい、以下のことを確認してみましょう。
高額な退去費用を請求された場合に確認すべき5つのチェックポイント
- 通常損耗の範囲内の損傷まで請求されていないか
- 経年変化が考慮されているか
- 原状回復費用の負担範囲を超えた請求項目が含まれていないか
- 支払う必要のない費用が含まれていないか
- 相場よりも高額な費用が請求されていないか
明細書と請求書を確認して、ガイドラインに照らし合わせながら支払いの必要がない請求やおかしな項目がないかを確認しましょう。
もしも、余計な請求があったり、請求内容に疑問がある場合は以下のように対処をしてください。
退去費用はこちらから何もアクションを起こさない限り減額はできません。
まず、明細の内容をしっかりと確認しましょう。